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多摩産ヒノキ使用 木工、型染め 一丸の曲げわっぱ 八王子の職人コラボで新たな工芸発信

八王子市の木工職人の手で、多摩地域の山林で育った上質のヒノキを使った曲げわっぱが誕生した。市内の型染め職人が装飾を施すコラボレーションで、新たな「伝統工芸」の発信が始まった。

薄く西日が差し込む工房。木工職人の三澤正孝さん(41)が、厚さ約3ミリに切り出したヒノキを、水のたっぷり入った筒から取り出す。長さは90センチほど。「一気にやりますよ」。布とアルミホイルで包み、200度に熱したアイロンを当てると、「じゅわー」という音が響く。水分が蒸発したらオリジナルの型に沿わせて曲げ、円形の板をはめこむ。一つ一つ丁寧に、確かめるように進められる作業。最後にガラス塗装を施し、つややかな曲げわっぱが完成した。

高祖父の代から大工・木工職人という三澤さんが多様な木を扱う中で「多摩産材」と出合ったのが製作のきっかけだ。適正に管理された多摩地域の森林から生産された木材の産地を「多摩産材認証協議会」が認証する制度で、「木のしなりや粘り強さに感動した。薄くしても曲げられるのでは」。地元の木材を使って新しい取り組みをしたいと考えており、加工を試す中で2020年、曲げわっぱの製作を思い付いた。

ただ、曲げわっぱを作るには高度な技術を要する。周囲に作っている人はいない。そこで、曲げわっぱの代表的な産地・秋田県大館市の職人の製法をユーチューブの動画で研究。乾燥方法なども試行錯誤し、繊細な技術を独学で身に付けた。「プラスチック製品と違って、木は機械で大量生産できない。完全に、職人の手仕事です」と自負する。

完成した曲げわっぱのふたに、曽祖父の代から続く染め職人の一家に育った山崎香さん(60)が装飾を施した。従来の技法にとらわれず、木に特化した染色方法を開発。絵柄には、都と八王子市の木であるイチョウと、市の花のヤマユリを選んだ。黄色や緑色などのやわらかな色合いは、木目とも相性が良い。

三澤さんは「日常には木材があふれているが、あまり意識されていない。生活の道具から多摩産材の魅力を知ってほしい。普及すれば、地域資源を活用して守ることにつながる」と期待する。山崎さんも「手間と時間をかけた作品は、時代を超えて受け継がれる。木のぬくもりや香りは五感を刺激する」と語る。

無染色の「東京曲げわっぱ」は2万7500円。型染めした「桑都(そうと)八王子物語」は3万4100円。三澤さんは「価格は高いが、職人の技術力と、良いものは長く使えることを知ってほしい。海外からの観光客にも手に取ってもらえたら」と願う。

同市八日町の「まちの駅八王子
CHITOSEYA(ちとせや)」で販売して
おり、今後、取扱店を増やす予定。
出典:東京新聞
#多摩産材 #木工房三澤 #東京十二木 #沖倉製材所
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